Course 0 外皮性能と負荷・室内環境・躯体の耐久性

建築環境で学ぶこと

建物の設計を行うには、意匠設計はもちろんのこと、 基準法や条例等を把握すること、建物の耐久性を高めること、構造に強く、耐火・防火性能を高めることなど、様々なことに配慮する必要があります。

このうち、建築環境では、次のことを学びます。

  • 建物で使用される主にランニング時のエネルギー消費量を削減する方法

  • 室内環境を良好に保つ方法

  • 躯体の内部・表面において適切な乾燥状態を保ち躯体の耐久性を維持する方法

次節以降、これらの項目について解説します。

エネルギー消費量の削減

次の記事を参考にしてください。

エネルギー消費量を削減するためには

負荷を下げる

負荷は、エネルギー消費量における用途と同様に、「暖房負荷」「冷房負荷」「換気負荷」「給湯負荷」「照明負荷」があります。

それぞれの負荷の説明は次の記事を参考にしてください。

暖房負荷と冷房負荷

換気負荷

換気とは室内と室外との空気を入れ替えることです。この換気に必要な空気の量を換気負荷と言います。家全体に必要な換気量は建築基準法で原則、0.5回と決まっており、全般換気と言います。一方で、トイレや調理に伴う換気は局所換気と言います。IHヒーターに変更するなどして局所換気を減らすことも可能ですが、あまり量としては減らないこと、換気設備の効率は上昇してエネルギー消費量自体が減っていることから、換気負荷を減らすことはあまり考慮しなくても良いかもしれません。

給湯負荷

給湯負荷とは、お湯の使用に伴って水からお湯に加温するために必要なエネルギー量です。お湯の温度は概ね40~50℃で設定されることが多いですが、手洗い等でもっと低い水温で使用すること、そもそも湯の使用量を減らすことにより給湯負荷を減らすことができます。湯の使用量を減らすには、節湯水栓を採用する、湯の配管としてヘッダー方式を採用する、節湯浴槽を採用することが有効です。また、風呂の浴槽に湯を張り、再加熱(追い焚き)する場合にも給湯負荷が発生します。この負荷を削減するためには、なるべく浴槽のお湯の温度が下がらないようにすること、浴槽の湯量を抑えることが重要です。このために、断熱浴槽の採用や節湯浴槽の採用が有効です。

照明負荷

照明負荷とは、部屋に必要な明るさのことです。家事・勉強・団らんなど室内で発生する行為にはある程度の明るさが必要です。一方で照明負荷の削減には、無駄な明るさを排除することも重要ですが、明るすぎるか否かは人それぞれで非常に難しく、きちんと照明設計をして適切な照度に抑えることが重要です。また、意外と居住者はつけっぱなしにすることが多いため、不要な時間は消灯するような仕組み、例えば人感センサの活用などが考えられます。また、外の明るさを利用する昼光利用という手法があります。開口部を大きく設け、適切に光を制御することで、室内を明るくし、点灯時間を減らすことも可能です。

外皮の性能と負荷との関係

住宅の外皮性能は次のとおり様々あります。

  • 断熱性能(保温性能)

  • 日射熱の遮蔽・取得性能

  • 通風性能

  • 昼光利用性能

  • 蓄熱性能

  • 気密性能

  • 自然換気性能

これらの性能を高めることは、エネルギー消費量の低減につながる負荷を抑えることにつながります。これらの性能と負荷との関係を記します。

断熱性能(保温性能)

室内よりも室外の躯体の表面温度が低い場合、躯体を通して室内から室外へ熱が流出します。 断熱性能をあげると、この熱流出を減らすことができ、暖房負荷が減ります。

一方で、夏に日射があたる部分については、室内よりも室外の躯体の表面温度が高くなります。 その場合は躯体を通して室外から室内へ熱が流入します。 断熱性能をあげると、この熱流入を減らることができ、夏の日射熱の流入を抑制し、冷房負荷の削減につながります。

断熱性能と言うと、冬のみの性能と捉えがちですが、 屋根など日射が当たる躯体で断熱することは夏の冷房負荷の削減にも効くことは非常に重要な点です。

断熱性能は、室内外温度1℃あたりの熱損失量 ( 単位 W / K ) を表す q 値(スモールキューち)で表されます。 この q 値を住宅の規模を表す外皮の面積の合計で割った値が、建築物省エネ法の計算や申請で使用される UA 値(ユーエーち) ( 単位 W / m 2 K ) です。

日射熱の遮蔽・取得性能

日射に起因してどの程度の熱が建物内に入ってくるのかを表した指標が、 m 値(エムち)です。 m 値は、単位日射強度あたりの流入熱量であり、単位は W / ( W / m 2 ) です。 この m 値を住宅の規模を表す外皮の面積の合計で割った値が、 建築物省エネ法の計算や申請で使用される ηA 値(イーターエーち) ( ( W / m 2 ) / ( W / m 2 ) ) です。

夏と冬とでは太陽の位置(主に高度)が違うため、夏と冬とでそれぞれ異なる値をとります。 夏と冬は、冷房期(Cooling season)と暖房期(Heating season)の頭文字をとって、添え字の C と H をつけます。

  • mH 値(エムエイチーち) : 暖房期の単位日射強度あたりの流入熱量 ( 単位 W / ( W / m 2 ) )

  • mC 値(エムシーち) : 冷房期の単位日射強度あたりの流入熱量 ( 単位 W / ( W / m 2 ) )

  • ηH 値(イーターエイチーち) : 暖房期の日射熱取得率 ( 単位 ( W / m 2 ) / ( W / m 2 ) )

  • ηC 値(イーターシーち) : 冷房期の日射熱取得率 ( 単位 ( W / m 2 ) / ( W / m 2 ) )

日射熱取得率を上げると冬期の暖房負荷が削減される一方、夏期の冷房負荷は増加します。 日射熱取得率を下げると冬期の暖房負荷が増加する一方、夏期の冷房負荷は減少します。

冬に日射熱流入を増やしたいという面から言う性能を「日射熱取得性能」と言い、 夏に日射熱流入を減らしたいという面から言う性能を「日射熱遮蔽性能」と言いますが、 どちらも日射に起因して室外から室内に流入する熱という意味では、物理現象として同じ性能と言えます。

日射熱は屋根などの不透明な部位から入ってくる場合と窓などの透明な部位から入ってくる場合に大別されます。

屋根などからの日射熱の流入を抑えるには、断熱をすることが重要です。 なお、日射が当たる屋根においては冬であっても室外側の表面温度が高温になり屋根から流入する熱が一時的に暖房負荷を減らすこともありますが、 日射があたらない夜間などを含めて1日を通して考慮すると、室内から室外に逃げる熱の方が多くなるため、 冬は日射があたる面であっても適切に断熱することが重要です。

開口部では、面積を大きくとると日射熱取得が大きくなります。 しかし、一般的に開口部の断熱性能はその他の部位に比べて悪くなりがちなため、不用意に開口部の面積を大きくすると、 断熱性能の低下を招き、室内環境が悪化します。 断熱性能を考えるうえで、開口部の断熱性能は非常に重要であり、 特に開口部の面積を大きくする場合はその部位の開口部の断熱性能に配慮が必要といえます。

開口部のガラスには日射熱取得型と日射遮蔽型があります。 日射熱遮蔽型を採用すると夏の冷房負荷は減りますが、冬の日射熱の流入による暖房負荷の低減は期待できません。 また、ブラインドやロールスクリーンなどの付属部材を活用することで日射熱を大幅に遮蔽することもできますが、 冬も付属部材を設置したままだと、冬の日射熱の流入による暖房負荷の低減は期待できません。

このように、開口部においては、夏は日射を遮蔽ことと冬は日射を取得することの両立が求められます。

この相反する性質を両立させる方法として、次の2つを挙げたいと思います。

1つは日よけの長さを適切に調節するということです。太陽高度は夏は高く、冬は低いため、日よけの出を適切に設計すると、夏は日射を遮蔽しつつ冬は日射を取得するという設計が可能になります。

もう1つは、付属部材の活用です。居住者の協力が欠かせませんが、夏は付属部材を設置し、冬は取り外すことによって、夏と冬とで異なる日射熱取得性能を実現します。 次に示すとおり、付属部材の遮蔽効果は絶大なため、うまくいけば、大きく夏と冬とで日射熱取得性能を変化させることができます。

このように、付属部材の開閉を上手に利用することや、太陽位置を把握したうえで日よけの出を適切に設計するなど、夏と冬とのバランスを取ることが重要です。

室内環境を良好に保つ方法

躯体の内部・表面において適切な乾燥状態を保ち躯体の耐久性を維持する方法